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住宅における「工法」とは?
理想のお家づくりを考える際、必ず知っておきたいのが住宅の「工法」と「構造」。
本記事では住宅における工法の基礎知識から工法ごとの特徴やメリット、理想の注文住宅を建てるための工法選びまで、特に押さえておきたいポイントをご紹介します!
「工法」の基礎知識
そもそも「工法」の定義とは?
「工法」とは、木で建てるのか、鉄で建てるのかといった素材を決め、建物を支える骨組みを組み立てる方法のことを指します。構造や工法によって建物の強度や断熱性、デザインなどに違いが出てきます。
工法選びの重要性
住宅を建てる際に工法を選ぶことは、完成した家の耐久性・快適性・機能性、そして建築コストに大きな影響を及ぼすため非常に重要です。以下の理由から、工法選びが重要とされています。
①耐久性と安全性
工法は建物の構造的な強度に影響を与え、地震や台風などの自然災害に対する耐性を決定します。適切な工法を選ぶことで、長期にわたり安全に住み続けられる住宅を建築できます。
②快適性
工法によっては、断熱性能や気密性が異なります。これらの性能は住宅の快適性に直接関係し、暖房や冷房の効率にも影響を与えるため、光熱費の削減にもつながります。
③コスト
工法によっては、建築にかかるコストが異なります。例えば、プレハブ工法は現場施工工法に比べて建築期間が短縮され、工事コストを抑えることができる場合があります。一方で、特定のデザインや耐久性を重視する場合、高い技術を要する工法が必要になることもあり、それに伴ってコストが上昇することもあります。
④将来的なカスタマイズ性
建築後にリノベーションや拡張を考えている場合、それを容易にする工法を選ぶことが重要です。一部の工法では、後からの変更が難しい場合があります。
これらの理由から、住宅を建築する際には、自分のニーズに最も適した工法を慎重に選ぶことが推奨されます。予算・デザイン・機能性など、様々な要素を考慮して最適な選択をすることが大切です。
主要な工法の比較
「工法」には様々な種類がありますが、ここでは日本で採用されている代表的な4つの工法について簡単にご紹介します!
木造軸組工法
柱、梁、筋交い(柱と柱の間に斜めに入れる材)など、木の「軸」を組み立てて建物を支える日本の伝統的な工法のこと。「在来工法」という言い方もあります。
鉄骨造
主要構造部に形鋼・鋼板・鋼管などの鋼材を用いた構造。軽量で粘り強い構造であることから、高層建築や大架構建築などに適しています。
RC構造
鉄筋コンクリート造とも呼ばれています。主に柱や梁、床・壁が鉄筋とコンクリートで構成されていて、鉄筋を組んだ型枠にコンクリートを流し込んで固めて、耐火性能を向上させた造りを指します。
2×4(ツーバイフォー)工法
枠組みとして多く使われる木材の寸法が厚さ2インチ、幅4インチであるためツーバイフォー(2×4)工法と呼ばれています。
工法ごとの特徴とメリット
理想のマイホームを建築をするための最初のポイントとして、主要な工法のことを知っておくことは非常に大切です。
素材や組み立て方によってどの工法も特徴があり、理想のマイホームを建てるためにはどの工法が良いか、知識があるだけでグッと選択の幅が広がります。
それでは各工法を選択するとどのようなことができるのか、特徴とメリットを具体的に紹介します。
木造軸組工法の特徴
コンクリートの基礎に柱を立て、そこに梁などの水平な材を渡してフレーム状の骨組みをつくり、屋根や壁などを取り付けて建築します。木材の組み合わせで建物を支える構造です。
この工法のメリットは、デザインや間取りの自由度が高いこと。
柱の位置や長さを自由に設定できるため、窓やドアを自由に設けることができます。窓の大きい家を考えている方にもおすすめです。
木材がベースとなりますが、柱と梁でつくられる枠の中に「筋交い」と呼ばれるX字状の建材を入れることで補強して作る「耐力壁」を適切に配置すれば、高耐震・高耐久を実現することも可能です!
伝統と現代技術の融合
伝統的な工法というだけあって、少し前までこの木造軸組工法は大工の職人技が重視され、個人の技量による精度のばらつきが生まれていた点がデメリットでした。ただ現在では、精緻に機械加工された木材や、木材同士の接合に補強金物が採用されるようになっており、このような個人の技量の差はほとんど問題にならなくなっています。
木造軸組工法の注意点
木造軸組工法の注意点としては、主材料が木材であるため、水・湿気に弱く、定期的なお手入れが必要になる点です。木材は含水率が高くなると腐朽が始まるため、「結露」が大敵!
腐朽が始まると、腐朽菌やシロアリが繁殖しやすい環境になるため、シロアリ被害に会いやすくなる可能性があります。また、屋根や外壁の劣化による雨漏りは、大きく家の寿命を縮める原因となり、主要な構造部の耐久性低下に繋がる結果となります。
マイホーム建築を検討する際は、定期的なメンテナンスの費用やかかる時期なども含めて検討する必要があります。後からこんなにかかるはずじゃなかったとならないようにしっかり保全の計画も立てましょう。
鉄骨造の特徴
鉄骨造とは、柱や梁など建物の主要な骨組みに鋼鉄を用いる方法で、S造とも言われています。一戸建て住宅にもよく使用されており、木造に比べると強度が高く、耐久性の高い住宅を作ることが可能です。性能としては、耐震性、耐火性、耐用年数、遮音性、デザインの自由度などの点で、木造とRC造の間に位置するイメージです。
また、鋼材の厚みによって軽量鉄骨造、重量鉄骨造と種類が分かれており、それぞれ共通するメリットのほか、独自のメリットがあるのが特徴です。
重量鉄骨造の場合
柱や梁のそれぞれの強度が高いため、使用する本数が少なく済み、その分、間取りやデザインの自由度を高くすることができる点が好評です。開放的な間取りや広い間口を得意とする工法です。また、大きな地震にもかなりの耐性を持っている点も人気の一因です。
その一方で、木材のような通気性や、コンクリートのような断熱性は持たないため、外気温の影響を受けやすく、夏は暑く、冬は寒くなりやすい特徴があります。さらに、内部結露が発生しやすいため、防錆処理が必須となります。
コスト面から考えると、耐久性、耐震性が高い分、強固な地盤を必要とするため、基礎工事や地盤改良にコストがかかる場合もあります。
軽量鉄骨造の場合
軽量鉄骨造の場合は、最も大きいメリットとして、建築コストを抑えられる点があります。
軽量の場合は重量と違い、部材の大量生産が可能なため、工期が短く済み、その分人件費を削減できます。その一方でデメリットとしては重量鉄骨造と同様に、内部結露が発生しやすい、外気の影響を受けやすいといった点が挙げられます。
また、特に軽量鉄骨造の場合、耐火性は高くないため、耐火被覆の処理が必要です。
RC造の特徴とメリット
RC造の特徴
RC造とは鉄筋コンクリート造のことを指し、主要構造部(柱、梁、床、壁、屋根、階段)や基礎を鉄筋とコンクリートにより造られた構造となります。
例えば、柱などの住宅の骨組みを鉄筋で組み上げ、その周りを型枠で囲み、中にコンクリートを流し込んで固めて建物を作っていきます。
RC造といえば、ビルの工法として一般的ですが、耐久力の高さなどに注目が集まり、戸建て住宅にも採用されるようになってきています。また、鉄筋コンクリート造の耐用年数は長く、税金を計算するための法定耐用年数は47年です。
RC造のメリット
RC造のメリットは、上述の耐久力が高い点や耐久年数が長い点以外に3つあります。
1つは、「耐火性が高い」点。使用されているコンクリートは不燃材のため、建物の耐火性は高いといえます。
2つ目は「気密性が高い」点です。RC造の構造上、建物にすき間ができにくいため、結果外気の影響を受けにくくなり、室内環境を整えることができます。なお、コンクリートは熱を通しやすいという特徴もあるため、プラスアルファで断熱材を利用することも良いかと思います。
最後は「遮音性が高い」点。気密性の高い建物で、かつ壁の厚さも他の構造に比して、厚い特徴があります。このため、遮音性に優れた構造となっています。
2×4(ツーバイフォー)工法の特徴とメリット
2×4工法は、木造枠組壁工法の一つです。柱や梁を組み合わせて作るのではなく、均一サイズの木材を壁・床・天井・屋根の部分に貼り合わせて作っていく工法で、主に北米で人気の方法です。
2×4工法は、耐震性・耐火性・耐風性に非常に優れた面を持つことが特徴です。このため火災保険を安く抑えることができるなどのメリットがあります。また、しっかり風対策ができるので、台風や風害による被害が多い地域に向いています。
作業工程・釘をうつ位置や本数はある程度決まっているため、品質に差が生じることがなく、耐震性が高いため、別途耐震性の強度を上げるための施工時間が不要となり、より時短で建築をすることが可能です。
工法によるデザインと機能性の違い
木造軸組工法
木造軸組工法は、設計に対する適応力に優れています。このため、狭小敷地や変形敷地に対する適応力も高く、外装デザインや間取りなどの設計デザインにも柔軟に対応することができます。また、日本の風土に最も適した工法となります。
軽量鉄骨造
軽量鉄骨造は、鉄の強度が優れている点を活用し、大きな窓や大きな空間づくりが可能です。なお、ただ大量生産された工業製品となるため、設計デザインの自由度は低くなっています。
重量鉄骨造
重量鉄骨造は、コンクリートを使わない分、柱や梁を細くできます(「ラーメン構造」と言います)。そのため、より広々としたスマートな空間づくりや、大きな窓を設けた空間演出など、デザイン力の高い設計ができる点がポイントです。
RC工法
RC構造では、鉄筋コンクリートの質感を活かした打ちっぱなしの外観、内装・階段など木造では出せない、独特なデザインの住宅デザインを設計することができます。モダンなデザインの家や、吹き抜け空間を作りたい方にもおすすめです。
2×4工法
2×4工法の場合は、デザインへの適応力もよく、輸入住宅から和風住宅までに採用されています。しかしながら、面で支える工法なので開口部を広くすることはできず、増改築も木造軸組工法よりも自由度が低くなっている点で注意が必要です。
工法選びのポイント
地域と環境を考慮した選択
自分の理想とするマイホームに合うのはどの工法か、工法選びのポイントとして以下が挙げられます。
敷地への対応力はあるのか(敷地を有効活用できるか)
制約のある場所で住居を建てる場合、なるべく隣地境界線ギリギリまで建物を寄せる など柔軟に対応できるかをチェックしてみましょう。
地盤との相性はどうか
例えば、RC造の場合、コンクリートが木造の数倍の重量があるため、しっかりした 地盤に建てる必要があります。地盤に不安が残る場合は、地盤改良や杭の打設作業が 必要になります。どんなに強い構造で建てたとしても、足元の地盤が液状化等で崩れ てしまったら、せっかくの構造が無駄になってしまいます。マイホームを建てる際 は、まず希望する場所の地盤や過去の災害についてしっかり調べましょう。
地域や環境、今現在の状況だけでなく、親との同居や子どもの独立など将来の不確定要素も考慮しておくことが重要です。
予算と工期のバランス
前述の通り、工法によって材料や工数が変わってくるため、予算と工期の観点から工法を選ぶことも大切です。一般的に、注文住宅の工期は2〜6ヶ月となる傾向があり、高価な家は後期も長く、安価な家は短期間で完成する傾向にあります。また建築を頼む業者が大手ハウスメーカーか地元の建築会社なのかによっても工期の長さが変わってきます。
工法の点から見てみると、木造軸組工法は職人の手作業による工程が入るため、他の工法と比較すると工期が長くなります。
RC構造についても、作業工程の複雑さや、コンクリートが固まるまでの時間の確保、その間に必要な専門業者の確保、現場の人件費といったコストがかなりかかってくるため、費用対効果的に問題ないかを考慮していく必要があります。
一方コストの観点としては、建築費用をとにかく抑えたい方には、木造軸組工法や2×4工法が向いています。3階建て以上の家を建てたい場合や地震に強い家に住みたい場合は、鉄骨造がおすすめです。
ちなみに、コストを抑えたい場合の手法として、他の構造と組みあわせてみることもおすすめです。例えば防音性の高い部屋を1階に作るため、RC工法を検討している方は、1階部分のみをRC構造とし、2階以上は別の工法で行うといった方法も考えられます。住宅メーカー等ご担当者がいる場合は、ぜひその方に相談してみてください。
まとめ
新しい住居でどのような生活を送りたいのか、デザイン性や使い勝手などどこを重視するかを考えていくことが、夢のマイホーム作りの第一歩です。
現物なしに考えることが苦手という方は、ハウスメーカーが行っている無料の住宅見学会などに行ってみて、イメージを膨らませていくことも良いかと思います。
工法によって、できることやデザイン性が大きく変わってきますので、住宅を建てる際はぜひ本記事を参考にしてみてください。