組織として契約を取れることが1番(後編)|株式会社建匠 濱田起郎氏
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高知No.1ビルダーで営業トップを走り続ける濱田(はまだ・株式会社建匠)さんに、乃村(株式会社マイホム代表取締役CEO)から、営業として意識していることやお客様の本音を引き出すコツ、また、店長としてチームを率いる秘訣をインタビューさせていただきました。
濱田さんよりお聞きした、『お客さんの立場に立つ』『建築動機を意識』『組織として契約を取れることが1番』を、前中後編に分けてお届けいたします。
今回は後編です。
他の【トップセールスと語る】インタビューシリーズはこちらです。
絶対1番良い家を建てるという自信がある
住宅業界ではよくあることですが、競合他社さんと悩んでいるケースではどのような提案をされますか?
濱田さん 大体8年もやっていたら他社がどうかわかってくるので、タマホームさんとか、ローコスト住宅はローコスト住宅の魅力があるので「安い家いいですよね」という話をしたりしています。
やはり、営業というよりアドバイザーみたいな立ち位置に近いですね。売りにかかっているというよりかは、お客さんの意思決定をするためのサポート、アドバイスをする立ち位置に近いですね。
濱田さん そうですね。僕らは正直、僕らの商品に自信があるから、他社さんの悪口ももちろん言わないし、各会社の魅力はもちろんあります。でも、こうなったらうちは絶対1番良い家を建てるという自信があるから、そこが建築動機と合致するような家づくりのシステムがあります。2回目、3回目には選択肢に残らないようにします。他社さんの間取りやプランを見比べても仕方がない。本質はやはりそこじゃないと思っているので、大体2、3回目には選択肢から消えていることが多いですね。
(他の会社さんに)「行きたいなら、行ってきたらどうですか?」とも促しています。「いつ行きますか?どこ行きますか?」という話もします。お客様的にも家は一度しか建てないので、あんまりわからないはずです。同じような会社見ていても仕方がないので、逆に言ったら、ハウスメーカーというブランドの強いところもちょっと特性が違うし、いわゆるローコストと言われる家も見てもらったりもしています。そういうところで「じゃあ何が見たいの?」という話をします。「それだったら、ここに行ってみたらどうですか?」「自分たちの家づくりに合ってますか?」という話をします。
売れない営業マンは上の責任
なかなか売れない営業マンと売れる営業マンの違いは何だと思いますか?
濱田さん 難しいですね。正直、今、店長という状況になって言えば、上の責任としか思えないです。
なるほど!でも、その腹のくくり方はすごいですね。
濱田さん 正直、同じ店舗で僕が見る管轄で言えば、初年度はどうしても、事前準備含め、お客さんとのギャップに時間がかかります。なので、1年目に売上をバンっと作るのは難しいですが、2年目であれば、6棟ぐらいは絶対いけると思います。本人の必要なスキルで言ったら「やる気」ぐらいですね。さすがに「やる気がない」と言われたら、こっちサイドとしてはきついです。そういう子はあまりいないので…。とはいえ、最初は、やはり営業のやり方はわからないです。「動機が違うだろう」とか「なんで他の会社さんがそうやって入ってきて、建匠はどう提案したの?」という話をします。僕らは会議がだいぶ長いです。だから、このあたりをちゃんとやれば、別に売れないことはないと思います。
長い営業会議の中ではどのような話をすることが多いですか?
濱田さん 前提として、その人自身が何棟やりたいかなど人それぞれです。20棟もやっていたら、契約率80%ぐらいないと、縛られる拘束時間が結構きついと思います。何棟やりたいかということと、自分がどうありたいか。それは粗利額からある程度の目安の年収とかも見えてくるし、動き方が変わってきます。今、何件お客さんを持って来なきゃいかないのか、単純に、お客さんをどんどん渡してもらえると思うなよ、みたいな所があります。なぜ、率が悪かった人に…という感じになるので、ここからちゃんと考えさせて、じゃあ自分が年間何棟やりたいかという目標を言ってもらいます。自分が言った数字なのだから、それに対しての、お客さんが何組いて、その中で、1つずつ問題は何かという話をして。ベースは動機とかを聞いていなかったりしますけどね。「それは全然ちゃうくない?」とか。後は「こうやって提案、話をしたら、お客様もわかりやすいやろ?」とか。できる限り細かく、こういう話をして、このハードルをちゃんと確認して、多分こういう事だから、こういう返しを、みたいな話をよくしていますね。営業会議で、ただ情報を、何歳で、今どういう家づくりをしたいという要望でとか、ただの情報しか出てこない。逆にそんな情報は、家作りたいから来てるのは当たり前やろ、みたいな感じです。それより大事なのは、なんで家づくりがしたいのかとか、予算はどれぐらいで、どれぐらいの規模感で、どういう感じでしたいのかというのは、明確に、その先のあと何回ステップ先にゴールが見えているか、こちらが見えていないと、お客さんが見えるわけないですよね。じゃあ何のステップを、何日で、全部言わせてどれぐらいか、それが見えている人間ほど契約が見えてます。じゃあ次、次回は予算計画です、じゃあその先は?まだ予算計画してないので解りません、じゃ絶対契約が取れない。いつ契約するかまで考えてから持ってきて、みたいな話ですよね。
組織として契約を取れることが1番
最後に、もし新入社員が入社して「僕トップセールスマンになりたいんです」と言って、トップセールスマンを目指すような人がいるとしたら、どんなアドバイスや教育をしますか?
濱田さん まず、初年度からは難しいと思うので、契約するまでどれだけ難しいかということを伝えます。そうしないと、絶対最初からくじけてしまう。そして「何年先にどうなりたいのか」を聞きます。トップセールスマンといっても、会社で1番なのか、県で1番なのかで少し変わって来ると思います。ローコストで売った方が売りやすいは売りやすいので、それが何のためのトップセールスなのか。お金が欲しいのか、モテたいのか。そういうことをきちんと聞きながら、そのためにどういう行動をしていこうか。いつまでに1人で全部しゃべれるようにならないといけないし、いつまでには、まず受注を何棟と取っておくとか。数棟とったらやることはそんなに難しくないので、その中で、契約率はこれくらいは取らないと、業務的に回らないだろうし。正直、やっていることはお客様へのヒアリングとそんなに変わらないですね。(新人だとしても)できないとは思っていないので、意図と目的が何なのかという話をします。こちらも教える人間になるということは、教える人間と同じではダメなんです。それ以上じゃないといけません。
ただ、自分の営業する時間も必要で、正直、会社組織として契約を取れることが1番だと思っています。うちの会社は80棟から100棟を保有していて、1人ではやれないので…。だから、僕はみんながどうやったら取れるかを考えています。自分だけで受注だけ取ろうと思えば、30棟とかいけると思いますが、例えば、40棟受注したところで、僕の限界の時間はみんなと同じ24時間しかないわけなので、みんなとやった方が絶対に楽しいです。みんなでその目標を達成するための、やりやすいようなことを意識したいと思っています。だから、20棟がそもそもすごいのかもわからないですし、何ならもっとやってる人も絶対いるので。それよりは、僕は会社としての存在意義の方が大事だと思っています。でも「お前が取れないのに、お前に言われたくない」と、他の人に思われても、それはそれで困るので…(笑)。だから、示せるための契約率と棟数は、ある程度自分にも必要だなと思っています。
面白いですね。だから、目線がチーム寄りなんですね。
濱田さん そうですね。無理矢理契約しようと思えばできるところもありますが、その家づくりのフローを崩してしまって「適当にやってるよ」みたいな話になってもダメなので。
確かに、僕も全国の工務店さんとか営業さんとかと話す中で、ソルジャーみたいな人もいるんです。会社がどうというより、とにかくインセンティブも含めて、自己実現のためみたいな。それはそれで1つのあり方、生き方かもわからないですけど、確かに言われている通り、総合目標、チームで達成することの喜びの規模が大きいですよね。でも、一貫して、さっき言っていた、意図と理由が何かみたいな所が、接客にも、社員教育にも通じているんだろうなと思いますね。
濱田さん そうですね。僕が店長になる前は、ちょっとどんよりとした重い空気が流れていました。売っている側もそうだし、お客様も面白くないですよね。だから、経営的にも悪いんだろうなと思います。今は、それよりも、楽しく話せるように、と考えてはいます。だから、僕も、40歳とか30代半ばの人とか、僕より年上の人でも全然別に気を使わずに揶揄ったりしますし、逆に、新卒の20歳ちょっとの子に揶揄われたりするし。そういう文化は会社的には大事だなと思います。建匠という会社は、それが許されるし、それが大事なのかな。「お前は下だからずっと掃除でもしておけ」みたいなのはちょっと…。なので、個人よりも、チーム寄りかなとは思います。
そうですよね。今まで聞いてきたトップセールスの方とはまた色合いの違う強みがありますね。
濱田さん だから、トップセールスマンだったら、もっと出来る人がいっぱいいるだろうから、僕でいいのかなというのはすごい気になるところではあるのです…(笑)。
いえいえ。でも「トップセールスマン」と一言で言っても、多様なトップセールスマンがいると思うので、すごくいいと思います。個人的には非常に共感できます。自社がやっている年間棟数を、そもそも自分1人ではできないとなったら、いかに良いチームを作っていくかのほうが大事ですよね。
濱田さん 1店舗でも結構大変だと思いますが、それが何店舗もあって、店舗に30人ぐらい社員がいて、それに関わる業者さんがいて、いろいろな家族がいるし、その家族の形を全部見ていくというのは大変です。
無理ですよね。
濱田さん 普通にやったら、無理ですね。きれいに全部見切れるかと言ったら見れない。
そうですよね。濱田さんの人間味が全開に出ていて、いいインタビューだなと思いました。ありがとうございました!
濱田さん ありがとうございました!
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