お客様に無駄をさせたくない(中編)|株式会社日進堂 植田泰一氏

香川県トップビルダーの株式会社日進堂でトップセールスとして上り詰めた植田(うえだ)さんに、乃村(株式会社マイホム代表取締役CEO)から、営業として意識していることや、接客中に大切にしていること、お客様とのコミュニケーションをとるための極意、そして、挫折からトップセールスマンとなった植田さんならではの貴重なアドバイスなどをインタビューさせていただきました。
 
植田さんよりお聞きした、『とにかく傾聴し、寄り添う』『トレンドをよむ』『人を知り、世の中を知る』を、前中後編に分けてお届けいたします。

今回は中編です。

前編はこちら後編はこちら

他の【トップセールスと語る】インタビューシリーズはこちらです。

トレンドをよむ

最近は、高気密高断熱や耐震性など、知識が豊富なお客様の方も多くいらっしゃいますが、植田さんが知識をつけるためにやっていることはありますか?

 植田さん トレンドが何かというのは気にはしていますね。お客様は、高気密や高断熱がいいと言っても、全員がそういうお客様ばかりではないのも事実なので。

全員が全員そうではないですもんね。

 植田さん それが1番だと言いつつも「外観が」とか「間取りが」と他にも気にされているポイントはたくさんありますので、PinterestやSNSを検索しながら、今のトレンドは何かをキャッチするようにしています。最近、デザイン重視の人も増えていると思いますので、外観は常に気にするようにしていますね。

それこそ、デザインに関しても、私が営業をやっていた10年前には、こんなかっこいい家はなかったですから。今、住宅業界全体のレベルが上がっていますよね。

 植田さん そうですね。「外観にはこだわらないよ」と言われていても最終的には気になってきたりと、お客様の真の要望を知るのはほんとうに難しいなと思っています。だからこそ奢らず、ご要望を引き出せるように常に学んでおかないとな、と。

PinterestとかInstagramが今主流になっているので、そのあたりは見てこちらも情報収集やトレンドをキャッチしておかないといけなくなってきていますよね。

 植田さん そうですね。その点は非常にそう感じています。

お客様に無駄をさせたくない

2回目の来店で気をつけていることや提案することはありますか?まず、土地探しの段階の人であれば、どのような提案をしますか?

 植田さん 初回来店の際に希望のエリアなどをお聞きしているので、2回目は希望に合った土地をご案内しつつ、建物の要望と合わせて再確認を行います。また、並行して意識しているのは資金計画です。総予算の感覚がずれてしまうと、最終段階で話がまとまらなくなることも多いので。この段階で要望を言ってくださっていたとしても、あくまでざっくりとした内容で、潜在的な要望をすべて出し切れていない場合もあるので。初回の話を再確認しながら「本当の予算」を確認していきます。土地と建物の予算配分について、お客様ご自身で「これがいい」と決めてこられる方はいませんし、そこは僕も絶対にこの割合がいい、とご提案できるわけではありません。ただ、予算の上限がなければ、ほとんどの方はCMでよく目にするハウスメーカーで建てるんじゃないかと思います。そうすると、今度は土地の予算にしわ寄せが。皆さんそれぞれ予算があって、その中でちょっとでもコスパ良く、品質の良い家を建てたいと思うのは当然のことなので。その予算と建物に求めるスペックが提案するものと合致しているのかどうか、土地にかけるお金とのバランスも考えてきちんとすり合わせることが大切だと思っています。

最近は、ウッドショックをはじめとした資材の高騰があり、コロナ以前に比べ建築原価が上がっています。例えば1年以上前の予算感で考えていらっしゃるようだったら、現状はこうなんですよ、とお伝えしておかないと、建築計画自体が難しくなってしまいます。直近で原材料の価格が下がりそうにないと見込まれますので、資金計画を意識することがより多くなりましたね。

よくよく話を聞くと、当初言われていた資金計画からの上振れや下振れはよくありますよね。「マックスはここまでいけるんですね」ということもあれば、実はもっと少ないということもあったり…。もちろん、基本的にはお客様は家作りが初心者なので仕方のないことではありますよね。

 植田さん 年収も最初にお聞きすることができれば、ある程度きちんと計算できますよね。でも、なかなか言ってくださらない方もいらっしゃるので、一旦仮に資金計画をして、月々の支払金額を一度計算して金額を見せて、「うん」と言ってくれるのか、「うーん…」となるのか、反応を見ます。ある程度、ブレがなければ、「うん」か、「あぁ…」といった表情をしてくれますが、本気でダメだったら、「いやいや…」と、引かれたりしますよね。それが後々の段階でわかってしまうと、結局場所選びやプランニングといった最初の段階まで後戻りとなり、それまでのお客様の時間を無駄にしてしまうので、資金計画の段階でしっかりと固めたいですね。結局、「お客様に無駄をさせたくない」というところに行き着くのかもしれないです(笑)。

建物の場合、2回目の来店で意識するところはどのようなところでしょうか?

 植田さん 建物の場合、2回目にはプランをご提案して打ち合わせを進めていきますが、1回目にヒアリングしたご要望が反映されていて、想像されていたイメージに沿っているかどうかを重視しています。あと、家の間取りを確認する際はご夫婦の表情を見るように常に心がけていますね。声のトーン、目元・口元の動き、どのようなことに関心が高く、逆にどのようなことに懸念を感じておられるか、言葉にならない要望を表情から読み取れるよう、意識的に見ています

なるほど。今、ウッドショックで原価が上がっていて、予算が合わないというお客様もいらっしゃると思いますが、どのように乗り越えたりしていますか?2~300万くらい変わってしまうケースもありますが、そのあたりは最近のお客様はもうご納得されている方が多いのでしょうか?

 植田さん 皆さん、意外とわかっていらっしゃるかなと思います。納得しているというより「仕方ない」という印象は受けますが。ただ、2~300万高いんだ、とテンションが下がったな、となったときに、僕はわかりやすく月々の住宅ローンのお支払いの話をします。現状の金利だと、100万円借り入れを増やすと月々の返済はだいたい3000円くらい増えますよね。建築費が200万円アップだとして、毎月6000円支払いが増えることになります。ここを、減らすかどうか、ですよね。

例えば建物の坪数を減らしたら金額は落とせます。でもその分、家が狭くなって希望が叶わない・・・一生ストレスを感じながら過ごすことになるかも?「うーん」と半ばあきらめた気持ちで3000万円借りるのと、よしっ、と奮起して3200万円借りるのとでは、その先に住宅ローンを支払っていくモチベーションが変わりませんか?とお話しします。

もちろん、お話しする皆さんにこの考え方を押しつけるわけではないので、やんわりとですが。例えば「リビングを広くして良かった」「収納を増やして良かった」「このキッチンをあきらめなくて良かった」と、ご家族みなさんが「これは価値があったな」と幸福感を感じられることで、支払いに対する精神的な不安が軽減されることもあると思うんです。

当たり前なんですが、家が建ってしまった後の支払いについて、僕がお手伝いできることは少ないです。月々3000円、6000円がその後のご家族の人生のプラスになると思ってもらえたら。最終的に、納得してその先の人生を過ごせるかどうかというのは、大きいのかなと。

また、雑学的な話になりますが、にわかには返るものがなかったとしても、「最近は外資系であれば、ドル建ての積立型生命保険もありますので、月々払えるだけで構わないので保険を活用してみてはどうですか?」と提案することもあります。月々の余力を少しでも充てていくと、15年後・20年後に繰り上げ返済する資金にもなる、等違う視点からのご提案もできれば、と考えています。

当社にはライフプランナーも数名いて彼らのアドバイスも心強いですし、僕のほんの少しの雑学でも、他社では聞けなかった話として持ち帰っていただいて「今日の打ち合わせの話、参考になったね」と時間もお金も無駄にならない、気づきの時間になればよいな、と思っています。

知らないことへの不安を取り除く

素晴らしい配慮ですね。では角度の違う質問ですが、本人はOKですが、後で親御さんが出てきて、契約が止まってしまうケースがあると思いますが、そういう時はどのような対応をされますか?

 植田さん 親子間で何か問題があるのであれば、早くに解決しましょうと働きかけます。親子だけで解決ができそうにないのであれば、親御さんと面談させていただいたりしています。とはいえ、最近、そのようなケースは減ってきましたが。

最近は減ってきているのでしょうか?

 植田さん たまたまかもしれないですが、少ない印象です。ただ、そういう親御さんがいらっしゃるのであれば、本当に早め早めにご解決いただけるようお話しします。ご夫婦で話しづらいようであれば、「じゃあ親御様もぜひご一緒にお越しください」と言ってご来店いただくようにしています。お父様、お母様は、大切な息子さん、娘さんのためを思っていろいろアドバイスをされていますよね。なのに、顔も知らない見ず知らずの営業マンと息子さん、娘さんが話をして家づくりを進めているのは、とても不安だと思います。なので、ご来店いただいて、僕と顔を合わせてお話させていただくだけでも全然違うんじゃないかなと思っています。そこで、ざっくばらんに、お父様やお母様が不安に思われていることがあるのであればお聞きして。もちろん、そこで信頼していただけるように頑張りますが、できなかったら、こればかりは極論仕方ないなと思っています。

それは仕方ないですよね。何でもかんでもひっくり返るわけじゃないので。

 植田さん 知らないことへの不安、みたいなものは取り除けると思います。ただ、お手伝いできるところはあれど、それ以上踏み込めない場合もありますので、難しいですよね。

家づくりのサポートという仕事は、for you

そうですよね。では次に、接客していて、どんな話になったらクロージングすることが多いですか。

 植田さん そこは感性になってきますね。僕は今日はここまでしか話さないとあらかじめ決めていても、今だ!と思ったら、最後までお話してしまいます。逆に、今日最後までお話ししようと思っていても、今じゃないなと感じたら絶対に途中で止めますね。

じゃあ、お客様の家を作る熱量度合いによって、という感じでしょうか?

 植田さん 熱量の度合いと、こちらにどれだけ向いてくれているかというところですね。

なるほど。お客様と自分との関係性がしっかりできているなと感じた時や、お客様が前のめりになった時ですね。その感覚を教育するのは難しいですよね。

 植田さん 後輩に教えるのは、ものすごく自分の感覚的なところがあるので、“今”というのを順序立てて説明するのは難しいです。

紙にステップで書けるようなものじゃないですもんね。意外と温度感が低いなと思ったお客様が、急に上がっている時もありますし。

 植田さん 鉄は熱いうちに叩け、なので、そこが非常に難しいですね。なので、何かを投げかけての表情やジェスチャーで、お客様の温度感などは常に見ていますね。

次に、最終段階で、クリアすべき課題は特にないけど決め切れない、言葉にしにくい不安に陥ってしまっているお客様にはどのような対応をしていますか?

 植田さん ストレートに、「本当に何か気になっている事はないですか?」と投げかけていますね。それで、お客様から少しでも言葉が出てきたら、「こういうのはどうでしょうか」と違う選択肢をご提案していると思います。なんとなく「どうしようか」みたいな人はたまにいるのですが、これが難しいなと。でも、そのような時は大体ご主人様が「うん」と言うかどうかが7割、8割なんですよね。

奥様待ちということは意外と少なそうですね。

 植田さん そうですね。なので、その時はご主人様を中心に、家を建てることによってその先にある家族の幸せみたいなことをお話しします。奥様の喜びをより考えてみた時に、というニュアンスの話や、「お子様の育児が新しいお家だったらさらに楽しく楽になりますよ」などです。あとは、僕の奥さんの話も交えながら、ちょっとでも背中を押すことになるような話をします。ご主人様は、誰かに背中を押してもらいたいという気持ちがあると思うんですよね。

なんとなくわかります。急に何千万のローンを組むのは、1回ポッキリで練習もしたことないし、いわゆる教育も受けたことがないですし。不安ですよね。

 植田さん しかも、逃げられないことじゃないですか。

これ大丈夫なのか?これでいいのか?みたいなことになりますよね。

 植田さん だから、ちょっと怖いというのがあると思うんですよ。自分も家を建てましたが、この仕事をしておきながら実際、契約書にサインする時、ちょっと躊躇する部分があって。お客様が躊躇するっていうのはこれなんだと実感する時があったんです。

わかります。僕も自分の家を建てたときに、絶対に払えるのはわかってるんですよ。なのに、ちょっとドキドキしたことを覚えているんですよ。いいのかな?って。だから、我々プロでも一瞬そうなったということなので、一般の方からしたらそれはなおさらそうですよね。

 植田さん はい。そういう経験をもとに「僕もそうでしたよ」とちょっと投げかけて。実際自分がサインしたときに、「これにサインをして家を建てたら、奥さんや子供の幸せが今よりちょっとでも増えるというのを想像できた」と話したりしますが、無理矢理進めないというのは心がけています。そういうふうにしてしまうと、for meになってしまうので。家づくりのサポートという仕事は、for youであるべきかなと。

「植田さんがそう言うなら」と受け入れてくださる関係

最後の段階で、競合他社様と2択で悩んでいるケースでは、どのような話をしてあげたりしますか。

 植田さん もちろん考えないと言ったら嘘になりますが、もうあまり競合の話はせずに進めますね。

なるほど。

 植田さん 競合している会社のことを話すと、悪口合戦にしかならないんですよね。なので、あえて競合の話はしないようにして、単純に「任せてもらえるのであれば」と思っています。それがあるからこそ、雑談して仲良くなりたいというところがあるのだと思います。

とにかく人間関係ですね。「担当があなただったら建てます」と、どれだけしっかり関係性を作れるかというのが重要ということですね。

 植田さん 本当は僕が目指したいのは大手ハウスメーカーのようにかっこいい営業マンなのですが、なかなか理想通りにはいきません。ですので、万が一、ミスや何かあったときに、「すみません」と謝罪して、「いいよ」「仕方ないね」と許していただける、そういう関係づくりが理想かなと思っています。

本当にその通りだと思います。

 植田さん 自分が確認をきちんとしたつもりでも、建築工事はたくさんの人が関わりますから、予期しないアクシデントは起こります。その時に、もちろん先頭に立って謝りますが、許していただける関係性があれば、僕のまわりの人も少しは気が楽だろうなと思っていて。僕もミスはしますし、人間がやることだから絶対に完璧はないので。「ごめんなさい」の後に精一杯対応して、それでも何かを妥協していただかなければならない時、僕の「大丈夫ですよ」を信じていただける、「植田さんがそう言うなら」と受け入れてくださる関係を作っていきたいと思っています。

後編はこちら

弊社では、お客様を一人も失わない選ばれる工務店をつくるサービス「マイホムビズ」を提供しています。

マイホムビズについては、ぜひ無料の資料をご覧くださいませ。
マイホムビズ紹介資料のダウンロード【無料】はこちら

工務店のコア業務を網羅した、顧客/物件管理サービス「マイホムビズ」

資料をダウンロード