【トップセールスと語る】寄り添う心とプロ意識(中編)|ロイヤルホーム株式会社グループ デイジャストハウス 上玉利幹太氏
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鹿児島No.1ビルダーで営業トップを走り続ける上玉利 幹太(うえたまり かんた、ロイヤルホーム株式会社グループ デイジャストハウス。以下、上玉利さん)さんに、乃村(株式会社マイホム代表取締役CEO)から、接客中に大切にしていること、また、結果を出すチームを率いる秘訣をインタビューさせていただきました。
上玉利さんよりお聞きできた、『新卒2年目で17棟の商談方法』、『営業知識の身につけ方』、『寄り添う心とプロ意識』を、前中後編に分けてお届けいたします。
今回は中編です。
他の【トップセールスと語る】インタビューシリーズはこちらです。
決定はお客様にしてもらう
お客様の重視するポイントの優先順位の聞きだし方で何か気にされていることはありますか?
上玉利さん お客様のやりたいこと、やってみたいことをすべて出してもらいます。私が全て書き出して、優先順位をお伺いします。
弊社では、お客様に一緒にお渡しする書類として、複写になっている記録書を使っておりますが、そこに「やりたいこと」「やってみたいこと」「やるかわからないけれどちょっと興味がある」みたいなことを全部バッと書き出して、「この中での優先順位はどうですか?」とお伺いするんです。「そういったやりたいことの反面、予算というものがあるんですけれど」ということで、見える化し、一緒に優先順位をつけていき「それであれば、うちですね」という感じで進めています。
「それを叶えられるのはうちですよ」とか、「性能だけを求めるならそこもいいですし、金額だけを求めるならそこもいいですよ」とか、「これとこれを挙げていただいたのであれば、うちがぴったりですよね」という話をすると、「うちが良い」という差別化もしやすいですね。
その中で、やはり、これ、これ、これという3つか4つの要望が出てくるので「それならうちですよね」という話がしやすいかもしれません。
お客様としても、頭の中で「やりたいこと」「やりたかったこと」という整理をして、すごくスッキリとまとまってくるので、お互いにメリットがあるというか。
最近は、ウッドショックだ、ウクライナショックだと、原価がどんどん上がっていて、価格のミスマッチが起きるお客様も出てくることがあると思いますが、価格が合わないときにやっていることはありますか?
上玉利さん 多分、ミスマッチというものは、どこの会社さんもありますよね。ミスマッチ、何か変わってきたな、と思う部分はあります。
しかし、結論としては、私としては、あまり何も変えておりません。たとえば、今の流行りでよくあるのは、家のサイズを小さくして価格を合わせる、とかですよね。もともとは4LDKで提案していたものを、「3LDKでも十分じゃないでしょうか?」という提案に切り替えるとか。あるいは、上がった分、さらに付加価値をつけていく、という会社さんも多いかと思いますが、私は、あまりベースは変えていません。
土地の割り振りのときや家の割り振りのときに、その予算の分配を円グラフでするんです。建物でいくら分、どこでも諸費用でこれくらいかかりますよ、と。そこの足し算は、この円グラフの中でどうにかするしかない。ただ、お家で削れる部分は限られてきますので、そこを、以前よりもより丁寧にするようにはなりました。
あとは、土地ですよね。土地で割り振りをするということで、エリア変更であったり、そのあたりで要望をちょっと抑えてみる、とかですね。誘導はしますが、決定はお客様にしてもらいつつ、という感じです。「予算的に無理なので、エリアをこっちにしたほうがいいですよ」ということを弊社が先走ると、楽しい計画ではなくなってくるので「どちらをとりますか?」という話をします。
「建売だったらこのエリアで可能ですが、そもそも建売の家づくりは嫌ですよね。そうすると、エリア変更という手段もありますが、どちらがよさそうですか?」とか。そのような2、3個の道をつくってあげて、選んでいただく、という感じです。
鹿児島市という土地はそれなりに高いので、土地付けというところでも苦労します。ですから、そこにも繋がってきます。
ありがとうございます。たとえば、お客様ご本人やご夫婦がOKでも、後で親御さんが出てきてひっくり返るケースというものもありますよね。この場合、どのような対策をされているのか、どの様に対応されるケースが多いですか?
上玉利さん 出てきそうな問題点というものは、予めこちらから「一般的にこういうものが出てきますよ」ということをお話しします。初回である程度お伝えし、出て来そうな問題点を先に出していってもらいます。
後手後手の対応になってしまうと、やりづらくなってきてしまいます。お客様が一番テンションが高いのは、初回だと思っているんです「この金額で建てられるし、物を置いても十分だね」と盛り上がっても、それが2週目3週目になれば、土地を見て「うーん」となってしまう。土地で盛り上がる方って、なかなかいらっしゃらないので。そうするとうちの魅力がどんどん薄れていってしまうので、初回で契約までのスケジュールをある程度組めるようにする。
「これはこの日までに完結させましょう」とか、「これはこの日までに」とか。それで「次回に会うまでに、親御さんに話してみてください」「次回は親御さんと一緒に来てください」とか。そういうことも、初回に組むようにしています「ご主人様や奥様はお若いということで、反対というわけではないのですが、心配される方もよくいらっしゃいます。その辺りはどうですか?」などを相談します。
その際に、相談されてから決めるのか、それともご自身のことだから、反対されても進めるのかをお伺いします。親御さんへの対応については「反対されたときにはどうしますか?」というところまで聞いています。無視して進めるのか。中には、そういう方もいらっしゃいますね。
それはそれで、いらっしゃいますよね。
上玉利さん ただ「やっぱり、反対されると、OKをもらうまでは進めたくないです」という方も当然いらっしゃいます。そういうときは「それじゃあ、一緒にやりましょう」と進めていきます。
出てきそうな問題は先にピックアップして、お客様に確認をしておく、というかたちです。
そうですね。それで、今までの3回の接客が全部ご破算だ、となってしまうと。
上玉利さん そうですね。逆に、お客様自身もそれに振り回されてしまうので、こちらがスケジュールを組んであげるほうがいいのかな、と。
冒頭と終わりの10分は今の位置を確認
なるほど、わかりました。次の質問ですが、2回目以降の接客で気にしていることはありますか?
上玉利さん 2回目は1週間以上空く方が、比較的多いです。初回は初めて聞くことが多いので、1週間経ってしまうと、忘れてしまっている部分が出てきます。営業マンとしては、1週間みっちりと土地も見に行って、プランもつくって、と準備はしておりますが、お客様にとっては1週間空くのでギャップが生まれてしまう。
ですから、2回目以降の商談時の冒頭で「前回はこういうことをしました」とか、「こういうことを確認して、こういうところまできたんですけれど」ということをお話しして、今の位置の確認をするようにしています。
すごい。
上玉利さん そこに向けて、商談の終わりに「今日はここまできましたから、次回はこれをしますね」ということを前もって伝えます。同じことなのですが、冒頭と終わりの10分はそういう話をしてギャップを埋めていくことを意識しています。ただ、2回目以降は、土地で苦労することが多いので「これだけいっぱい見て来ましたよ」ということを伝えたりもします。安心できる材料が多ければ多いほどいいと思います。
私も上席から教わったことで、土地の敷地調査に行って、影の長さまで測る事をしていたりしています。これを営業の方に見られていると、真似をされてしまうのかもしれないのですが。笑
すごいですね。
上玉利さん それをもとにプランを作成して、配置します。たとえば、「一番太陽の高度が低い冬の12時頃にデータをとりに行ったときはこれでしたので、1年中日当たりがバッチリですよ」とか。あとは「ゴミステーションの位置はここでした」とか。バス停を気にされる方であれば、時刻表をネットで落とさずに、そのバス停に貼り付けてある時刻表を写真で撮ってくる、とか。
やはり「撮ってきましたよ」と言うと、喜んでくださいます。
それは親切ですね。お客さんにとっては普通に嬉しいですね。
上玉利さん あとは、「歩いて学校まで行ってみましたが、10分ちょっとで行けました」とか。折角行ったのであれば、そういったことがプラスアルファの付加価値としてお客様にお伝えできたらな、というところです。
どういう状況でクロージングする、とか目安がありますか?
上玉利さん クロージングに関しては、一応順番はあります「それじゃあ、これで」「この日にクロージングしてどうのこうの」という点はあまり意識せず小出しにしています。クロージングの回数を増やしている、というイメージです。全部揃って一発で、となれば、すごく気持ちはいいかもしれませんが、1回目で「もううちでいいですね、契約をしましょう」という言葉をとるのは、結構負担が大きいと思っています。
たしかに。
たとえば初回で「方向性がぴったりですね、もううちでいいんじゃないですか?」みたいに冗談半分な感じで言って「うちでいいですね」とか、「進めましょうか」という言葉に慣れてもらう。
面白い。
上玉利さん 初回で「建物を見て予算もOKなので、どうですか?うちで不安なことはないですか?」と言うと、「まだ土地が決まっていないので」となると思うんです。「それじゃあ、逆に土地が決まればうちで問題なさそうですか?」と聞いてみる。そうすると「でも、まだ見ていないので」とか、そういう深掘りがどんどんできます「まだ始めて1社目なので」と言われたら「それじゃあ、何社見たら決められそうですか?」とか「そのためにどこを見に行く予定ですか?」などを聞けます。行く必要がないところであれば、「行かなくていいですよ」と言ってあげられます。
その場で問題点のテストクロージングをかける。それによって断られてもOKだと思っています。そこで不足点の確認ができるので、次回までにその用意もできる、という事です。クロージングという意味では、その類の言葉は、1日の中に3回か4回は言っているかもしれないです。「お願いします」という感じというよりは、「もう、うちでよくないですか?」みたいな。ちょっと軽い感じですけれど、2回目や3回目で、本当に整った段階で、ちょっと締めるんです。「こうやって冗談めいて言ってきたんですけれど、もう全部揃ったと思うんですが、何か不安はないですか?」とか。「私のことが嫌いではなければ、もう進めてもいいタイミングだと思うんですけれども」みたいな。そんな感じです。良い答えになっていないかもしれないんですけれども。笑
すごく良い答えだと思います。では、お客様の本音を引き出す工夫は何かありますか?
上玉利さん 最初から本音でパッと喋ってくださる方はなかなかいらっしゃらないので、ヒアリングのノウハウ本とかにもよく書いておりますが、簡単な質問からどんどん広げていく、ということです。イエスやノーで答えられるようなところから質問していくということは、知識としては頭に入れています。
そういったことが前提で、お客様からポロッと出てくる暮らしに対しての思いや、お子様に対しての思いに結び付けていって、という流れです。
お客様の思いに共感する、ということですね。
上玉利さん 共感するといいますか、厳密に言うと、「共感している感じ」というのが近いかもしれないです。
寄り添ってあげる立場ではあるんですけれど、言葉が難しいですね。寄り添いすぎると、良い提案ができないとも思っております。最初にちょっとお話をさせていただいて、適切な部分で、間違っていることに対しては「間違っている」と言うことや、必要のないことには「必要がない」と言ってあげることも仕事かな、と感じております。
最終段階で「もうこれ以上は見せる物件もないし、話も全部出し切っているかな」となった時、不安に陥ってしまう人もいると思います。「よくわからないけれど」など。その様な悩みや不安に陥っている人には、どのように対応されていますか?