不安材料を払拭して受注へ(後編)|株式会社クリエイト礼文 鈴木 利彦氏
INDEX
山形県No.1ビルダーとして、そして、営業としての現役時代には多くの功績をもたらし、会社をリードし続けた鈴木 利彦(すずき・としひこ/株式会社クリエイト礼文・山形支店支店長)さんに、乃村(株式会社マイホム代表取締役CEO)から、営業として意識していたことやお客様の本音を引き出すコツ、また、部下を育てるためのマイルールについてインタビューさせていただきました。
鈴木さんよりお聞きした、『お客様に感謝される営業』『新築住宅の三本柱』『他社と戦わない営業』を、前後編に分けてお届けいたします。
今回は後編です。
他の【トップセールスと語る】インタビューシリーズはこちらです。
意思表明をしてもらう
ウッドショックなどで原価が上がり、予算が合わない、価格のミスマッチが起きてしまっているということがあると思うのですが、その辺はどのように乗り越えていらっしゃいますか?物件価格が上がっているけど、お客様の年収が上がっておらず、買いたいけど予算が届かないというケースの時はどのような商談をしたり、お話をされていますか?
鈴木さん 物価自体が上がっているので、私たちを含め、どこのメーカーも同じ状況というところが現状です。まず、ご予算の話になった際に、総額でおいくらぐらいを希望なのか、もしくは、月の返済金額がどれぐらいなのかという点が問題になってきます。予算は上がっていても、月々10万円ぐらい払えるというお客様なのか、逆に、総額と月々の予算が比例していないお客様が結構いらっしゃるので、ウッドショックはあるものの、どちらかというと、お客様の毎月のお支払いに合わせた提案を心がけています。
弊社自体は、注文住宅で建物を強調していくより、企画住宅を強みとしている会社なので、お客様の総額に合わせて土地を紹介したり、住宅ローンの返済年数も35年ではなく、40年をご提案させていただくようにしています。月々の支払い金額からの逆算で話をして、決して、ウッドショックや建材が高騰しているというネガティブな話は、初回の段階では極力しないようにしています。
今住宅ローンで長いのはどれぐらいですか?
鈴木さん 40年ですね。
そうすると、月々のお支払いも下がりますね。確かに、月々の支払いに関しては、日常生活に、いかに無理がないかというところで重要ですよね。例えば、若いご夫婦とかで、本人が買いたいとなっても、あとで親御さんが出てきて、意見がひっくり返ってしまうケースがあると思いますが、そういう時はどのような対応をされていますか?
鈴木さん やはり山形では、都内と違って長男が後を継ぐというような風習がまだ根強くあり、若いご夫婦が住宅を求めて窓口に相談に来た場合は、当たり前のようにご両親様とのコミュニケーション状況を確認するようにしています。「親からの反対が入ることが多いと思いますが、大丈夫でしょうか?」とわざと聞いて、強がりでも何でも良いのですが、奥様の目の前で「親が反対しても俺は建てるんだ」とまず言ってもらいます(笑)。
意思表明をしてもらうという事ですね。
鈴木さん 「親からの反対があった場合、あなたはどうしますか?」と、事前に言ってしまって、愛する奥様の前で「俺は絶対に家を建てるんだ」と宣言させます。そうは言うものの、親御さんのお気持ちや、ご長男であったりすると、ご両親の気持ちもわかるので「ご両親はおそらくこう言ってくると思いますよ」とか、「お金のことを心配して、払っていけるのかを心配してくると思います」など、予測されることを全てご主人様にお伝えしますね。そして、ご両親様も間違ったことは言っていないと思っており、最終的には「奥様が嫁に入った立場で、ご主人様の両親に何か言えるわけがないので、ここはご主人様は頑張るところだから、頑張れますか?」と問いかけて「頑張ります」という言葉を聞いてから送り出します。
戦わずして勝つ
なるほど。初回来店されて、2回目以降で心がけている事やクロージングの方法について教えて頂けますか?
鈴木さん おそらく、他の工務店さんと大きく違うのがここだと思うのですが、私たちは、土地を紹介するケースが多いので、土地が決まれば、簡単に建物もくっついてくるというところがあります。なので、土地を紹介する時も、本命対抗馬のような一般的な出し方はしていません。「もしこういう価格帯の土地があったら、向かってきますか?」という布石を打った上で、最初から土地自体はありますが「ありました」という出し方をするので、土地を決める=建築条件の土地だったら良いのですが、一般仲介の建築条件が付いていない土地でも「ないと思いますけど…」と土地だけを紹介して「建物が違うメーカーだと私が報われないんですけど、ご指名はいただけるのでしょうか?」と聞いてしまいます(笑)。
ストレートに聞くのはいいですね(笑)。御施主様の本音を、徐々に話してもらえるようになるためには、どういう工夫をされていますか?お客様の中にも「この人だったら…」と心を開いてくれる瞬間があると思うのですが、その状態になるまでに、ここは越えていかないといけないとか、この話は絶対にしないといけないというものはありますか?
鈴木さん いろいろなケースがありますが、私の身の上話をする時もあれば、過去の経験談の話をしてみたりします。
要は、お客様が不安に思われていそうなことを、こちらから先に話してあげるというイメージでしょうか?
鈴木さん そうです。
次に、最終段階で不安に陥っている人に対して、どのようなコミュニケーションをとりますか?ほぼ条件はクリアし、悩みどころはないはずだけど、家を買うということ自体に不安が大きくなってしまっている人に対しては、どのような話をされていますか?
鈴木さん 後押しする最後の一言としては、私自身18年間こういう仕事をしてきて、いろいろなお客様を接客し、いろいろなお客様を見てきた、と。例えば、その方が佐藤さんというのであれば、「佐藤さんのような方が、いろいろなご質問いただき、このようなお話いたしましたので、佐藤さんだったら絶対成功しますね」というように、根拠はないのですが、私の統計的な判断であとは大丈夫だ、と。「だから、自信を持ってくださいね」という話をします。
そもそも、この不安に根拠がないですもんね。競合他社様と悩んでいるケースは、どのように対処しますか?
鈴木さん そこはすごく気をつけているところなのですが、戦わずして勝とうと思っています。最終的に、間取りの話など建物をパフォーマンスする話になってしまうと、必ず他社さんが競合になります。お客様もわかってはいるのでしょうが、私たちに他社のメーカーさんのことを押し付けてきたり、逆に他社さんに私たちのコストの話をしたり。トーナメント方式で行くと、準決勝から決勝に上がっていって、どんどん切り落とされていて、どこどこのメーカーとユニテのどっちかにしようという話に巻き込まれると、最終的に、私たちは数を結構こなしている会社なので、下げてでも勝てという風習ができてしまいます。なので、戦わずして勝つということは、もう予選の段階から、他社さんとの差別化だけに気をつけています。決勝の段階では、振るい落とされていて、他社さんの良い話、盛り上がるクロージングのタイミングになったときには、もう他社さんがいないという状況を心がけています。
お客様に対するホスピタリティー
次に、上司としての立場ですが、伸び悩んでいたり、思うようにいかない営業マンと、売れる営業マンの違いは何だと思いますか?
鈴木さん 根性じゃないでしょうか(笑)逆に聞きたいです。
行き着くところですね(笑)でも、粘り強さみたいなところでしょうか。すぐにあきらめない、すぐに努力をやめないという。
鈴木さん 根性と一言で言ってしまったのですが、何が根性かと言った時に、接客時のお客様に対するホスピタリティーであったり、例えば、不動産の知識もそうですし、建築や融資の知識も、勉強することも含めて根性だと思っています。なので、ただ単に、残業しているから根性ということではないですね。
最後に、住宅業界に入ったばかりで、トップセールスマンを目指したいという、向上心の強い若い子が入ってきたとしたら、まず鈴木さんはどんなアドバイスや教育をしますか?例えば、はじめの1年目はこれをやれ、みたいなものはありますか?
鈴木さん 「親の背中を見て子が育つ」というスタイルなので、もちろん言葉に出して教えてはいるものの、スキルアップや知識をつけるためにこういうことをやったらいい、というより、会社の組織人である以上、忠誠心を抱いてどのくらい会社のために貢献できるかという精神的な部分に訴えかけておりますね。なので「周りの目の色や顔色を気にして縮こまったような仕事はしなくてもいいよ」という話をします。そして「あなたのミスで、もし万が一トラブル等が起きたら、私がすぐフォローするから、あなたは思いっきり仕事をしなさいね」と伝えるようにしています。失敗を恐れず、というところは常に言っていますね。
それは安心ですよね。ありがとうございました。
他の【トップセールスと語る】インタビューシリーズはこちらです。